地 域 固 有 野 菜 の 品 質 評 価
前 原 美 恵 子 ・ 廣 瀬 正 純
食 品 産 業 部
Specific Propaties and Processing Suitability of Unique Vegetables in Oita Prefecture
Mieko MAEHARA
・
Masazumi HIROSE
Food Industrial Div.
要
旨
大 分 県 内 の 地 域 固 有 野 菜 と し て , 6 品 目 の 野 菜 類 , 豆 類 に つ い て 一 般 成 分 分 析 や 調 理 特 性 の 評 価 を 行 っ た と こ ろ , 際 だ っ て 優 れ て い る と い え る 野 菜 は な か っ た が , 現 在 主 流 と な っ て い る 品 種 と 比 較 し て , 日 田 1 号 , 新 田 ゴ ボ ウ 等 の 評 価 は 高 か っ た .
1.
はじ
めに
大分県には,ごく限られた地域のみで生産されている 地域固有野菜が多い.これらに注目し再評価するために, これまでの調査で掘り起こされた本県固有野菜の栄養成 分,機能性および加工適性を明らかにした.16年度は サトイモ日田1号,みとり豆,ヒョウタンカボチャ,1 7年度は新田ゴボウ,チョロギ,久住タカナについて品 質特性と加工適性について評価を行った.
2.
実験方法
2.1 試料 2.1.1みとり豆
み と り 豆 は 宇 佐 市 産 を 普 及 セ ン タ ー を 通 じ て 入 手 し た.対照として北海道産普通アズキの市販品を用いた.
2.1.2日田1号
日田1号は,天ヶ瀬町産を普及センターを通じて入手 した.対照として農業技術センター畑地利用部で栽培さ れたエグイモを用いた.
2.1.3ヒョウタンカボチャ
ヒョウタンカボチャは佐伯市産を普及センターを通じ て入手した.対照として北海道産エビスカボチャの市販 品を用いた.
2.1.4新田ゴボウ
新田ゴボウは大分市新田産を普及センターを通じて入 手した.対照として宮崎県産山田早生の市販品を用いた.
2.1.5チョロギ
チ ョ ロ ギ は 竹 田 市 産 を 普 及 セ ン タ ー を 通 じ て 入 手 し た.
2.1.6久住タカナ
久住タカナは竹田市久住町産を普及センターを通じて 入手した.
2.2 成分分析 2.2.1 みとり豆 2.2.1.1 外観比較
大きさは,平均的な大きさのサンプルの長径をノギス で測定した.色調は,シャーレに1層を並べたものを場 所を変えて5回測色色差計(CM-3500d ミノルタ製)を 用い 試料 の反射 光を L*a*b*表 示系にて測定し,平均し た.
2.2.1.2 一般成分分析
水分は135℃常圧乾燥法,たんぱく質はセミミクロ ケルダール法,脂質はソックスレー抽出法で分析した.
2.2.1.3 煮豆加工適性
豆粒30g を200mlの蒸留水で60分間煮沸後, 煮豆と煮汁に分離し,重量,色調を測定した.煮くずれ の程度は3段階に評価した.
2.2.1.4 赤飯調製法
豆を6倍量の水で15分間ボイル後,充分に吸水させ た米とともに40分間蒸して製造した.
2.2.1.5 餡調製法
み と り 豆 お よ び ア ズ キ を 柔 ら か く な る ま で 水 煮 し た 後,水煮前の豆の重量と同量の砂糖を加え餡に仕上げた.
2.2. 2 サトイモ日田1号 2.2.2.1 一 般 成 分 分 析
水分は70℃減圧乾燥法,たんぱく質はセミミクロケ ルダール法,脂質はソックスレー抽出法で分析した.
2.2.2.2 色調
ル後の測定は,剥皮後沸騰水中で15分間処理したイモ の赤道部の断面を測色色差計で測定した.
2.2.2.3 煮イモの官能評価
生イモを剥皮後,醤油を少量加えただし汁で15分間 ボイル,冷却し官能評価に供した.パネラーは12人で 行った.
2.2.3ヒョウタンカボチャ 2.2.3.1 一般成分分析
水分,たんぱく質,脂質,灰分を測定した.
2.2.3.2 外観
生のカボチャと煮付けにしたカボチャの色を測色色差 計で測定した.
2.2.3.3 糖組成
シ ョ 糖 , ブ ド ウ糖 , 果 糖 の 量 を 80%エ タ ノ ール で 抽 出後HPLC(HEWLETT PAC KARD HP-1050A)で 測定した.カラムは Shodex Sugar SC1101, カラム温 度は80℃,移動相は蒸留水で流速は 1.0ml/min で行っ た.
2.2.3.4 デンプン含量
デンプンの測定は,F−キット スターチを用い,吸
光度を分光光度計(日立製Uー 2001)により測定した.
2.2.3.5 官能評価
カボチャの煮付けおよびスープの色,味,食感を官能 で評価した.スープは,少量のタマネギとカボチャを炒 め,牛乳およびコンソメスープで煮たものをジューサー にかけた後裏ごししたものを用いた.パネラーは 10 人 で行った.
2.2.4新田ゴボウ 2.2.4.1 一般成分分析
水分,たんぱく質,脂質,灰分を測定した.
2.2.4.2 断面の褐変経時変化
切 断 後 の 断 面 の褐 変 の 経 時 変 化 に つ いて ,包 丁で 切断直後,5 分後,10 分後の色調を測色色差計で 測定した.
2.2.4.3 ポリフェノール含量
ポリフェノール含量の測定はフォリン−デニス法を用 いた.測定値はクロロゲン酸相当量として示した.
2.2.4.4 DP P Hラジカル消去活性
抗酸化能の指標として DPPH ラ ジカル消去活性を測 定した試料溶液1ml,0.2mM酢酸緩衝液(pH5.5)1ml,エ タ ノ ー ル 2 m l, 0 . 5 m M D P P H( 1 , 1 − diphenyl-2-picryl-hydrazyl)EtOH溶液1mlを順次混和し反
応液とした.これを暗条件の室温で30分後,517nmの 吸光度を測定し,Trolox相当量として示した.
2.2.4.5 官能評価
ゴボウは,サラダ油で炒めたものを,醤油,砂糖,塩
で薄く味付けしたものをキンピラゴボウとして官能で評 価した.パネラーは11人であった.
2.2.5 チョロギ 2.2.5.1 一般成分分析
水分,たんぱく質,脂質,灰分を測定した.
2.2.5.2 ポリフェノール含量
ポリフェノール含量の測定はフォリン−デニス法を用 いた.測定値は没食子酸相当量で示した.
2.2.6 久住タカナ 2.2.6.1 一般成分分析
水分,たんぱく質,脂質,灰分を測定した.
2.2.6.2辛子油の測定
久住タカナからの辛子油の抽出は,アセトニトリルと 水を9:1に混合した液を葉と茎部に分けたタカナに9 倍量添加し,ホモジナイズ後,2時間振とうしたものを, メンブランフィルターでろ過した後にHPLCに用いた. HPLC の条件は,移動相がアセトニトリル:蒸留水が6
: 4 , カ ラ ム は YMC AA12S05-1506WT, 流 速 は 1.0mil/min,検出器はUV244nmで 行った.
3.
実験結果および考察
3. 1みとり豆
みとり豆はアズキと比較して小さく,大きさはアズキ の93%,重さは75%程度であった.みとり豆の色調 は, L*値 ,a*値 ,b*値 と もに アズキに比べて低く,黒 色に近かった(Table1).
Table1.みとり豆とアズキの外観比較
みとり豆とアズキの成分を比較すると,みとり豆がア ズキに比べて水分が少なく,たんぱく質と脂質がやや多 かった(Table2).
Table2.みとり豆とアズキの一般成分組成
み と り 豆 と ア ズ キ を 煮 豆 に 加 工 し た と き の 歩 留 ま り は,両者にほとんど差がなかった.煮豆,煮汁の色調は, みとり豆がL*値,a*値,b*値ともアズキに比べて低く, かなり濃い色調であった(Table3).
みとり豆はアズキと比較して,煮豆加工したときの煮
重量 大きさ
(g/ 100粒) (長径mm) L * a* b* みとり豆 13.8 8.0 16.6 0.09 0.44
アズキ 18.3 8.6 24.4 15.6 10.1
色調
水分 タンパク質 脂質 炭水化物 灰分
みとり豆 9.5 22.4 1.3 63.4 3.4
くずれが少なく,食味香りともに濃厚で品質は優れてい ると思われた(Fig1).
Table3.みとり豆とアズキの煮豆の品質
Fig1.みとり豆とアズキの煮豆の煮くずれ程度
みとり豆とアズキの赤飯の官能評価は,外観,香りに 差がなかったが,食味,食感ともみとり豆がアズキに比 べ て 評 価 が 高 か っ た (Fig.2) . み と り 豆 と ア ズ キ の 餡 の 官能評価は,外観ではみとり豆がアズキより評価が高か ったが,食味,食感ではアズキの評価が高かった.香り には差が見られなかった(Fig.3) .
Fig2.みとり豆とアズキ赤飯の官能評価
Fig3.みとり豆とアズキ餡の官能評価
0% 20% 40% 60% 80% 100% アズキ
みとり豆
割合
甚 中 なし 歩留まり
% 外観 L* a* b* L* a* b* みとり豆 248 黒色で光沢多 15.2 3.24 0.33 12.3 3.85 - 0.59 アズキ 259 赤紫色で光沢少 25.1 9.73 6.50 25.6 5.37 8.62
煮豆の色調 煮汁の色調
3. 2サトイモ日田1号
一般成分組成は,日田1号とエグイモでほとんど差が 見られなかった(Table4).
Table 4日田1号とエグイモの一般成分組成
生イモの色調は,L*値ではほとんど差がないものの 目視では明らかに日田1号が白く鮮やかであった.ボイ ル後の色調は,L*値,a*値,b*値には反映されないが, エグイモは紫色が強くなりくすんだ色調になったのに対 して,日田1号は鮮やかさはなくなるものの白味の強い 色調であった(Table5).
Table5.日田1号とエグイモの色調
官能検査の結果は,日田1号がエグイモに比べて外観 が良く,やや硬いものの粘りが強く,食味も優れた(Fig4 ∼7).
Fig4.煮イモの官能評価(外観)
Fig5.煮イモの官能評価(粘り)
水分 タンパク質 脂質 炭水化物 灰分
日田1号 84.8 1.2 0.16 12.7 1.1
エグイモ 83.9 1.6 0.18 13.2 1.1
L a b
日 田 1号 87.5 - 1.08 9.26
エグ イモ 86.3 - 0.61 10.84
日 田 1号 69.3 - 0.53 0.54
エグ イモ 72.6 0.54 3.63 色 調
ボ イル 後 生
処 理 品 種
- 1 - 0.5 0 0.5 1
外
観
香
り
食
味
食
感
評点
あずき みとり豆
- 1 - 0.5 0 0.5 1
外
観
香
り
食
味
食
感
評点
あずき みとり豆
外 観
0 1 2 3 4 5 6 7
- 3 - 2 - 1 0 1 2 3
悪い ← → 良い
(人 )
えぐいも 日田1号
粘 り
0 1 2 3 4 5 6
- 3 - 2 - 1 0 1 2 3
弱い ← → 強い
(人 )
Fig6.煮イモの官能評価(硬さ)
Fig7.煮イモの官能評価(食味)
3. 3ヒョウタンカボチャ
ヒョウタンカボチャは市販のカボチャに比べて水分が 多かったが,他の成分に大きな差はなかった(Table6). ま た , 糖 組 成 に も あ ま り 違 い は な か っ た (Table 7 ). 果肉の色は,市販のカボチャと比べるとL*値が低く,a* 値,b*値が高く,煮付けでは市販品と比較してa*値,b* 値 が 低 く な っ て い た (Table8). 目 視 で は , ヒ ョ ウ タ ン カボチャは,市販品と比べると赤色が薄く感じられた.
Table 6 カボチャの一般成分組成
Table7 カボチャの糖組成(g/100g)
Table8 カボチャの色調
3. 4新田ゴボウ
ゴボウは,市販品と比較して,水分が多く,脂質,灰 分が少なかった.また,ポリフェノール含量は,新田よ りも市販品が約 1.5 倍高かった(Table10) が,庖丁で切 断後の切断面の色調変化は,時間経過後L*値,b*値が 低くなる傾向であったが,品種の差はみられず(Fig10) , 同様に褐変が進行した.
Fig10 ゴボウ断面の色調の経時変化
また,DPPHラジカル消去活性は,市販品が約 1.6程高 かった(Table10) .DPPH ラジカル消去活性とポリフェ ノール含量の相関は指摘されているが,ゴボウに関して
はより詳細な検討が必要である. 官能検査では差はわ
ずかであったが,味,外観,歯ごたえ等すべての項目で 市販品より評価が高かった(Fig11).外観,味の点に関 してはポリフェノール含量が少ないため,いわゆるアク が少ないためと考えられた.
L*
a*
b
*
L*
a
*
b
*
72
.0
19.3
74.3
42.0
6
.5
3
6.4
75
.5
16.4
62.4
41.2
12.1
4
3.8
生
煮
つ
け
ヒ
ョ
ウ
タ
ン
カ
ボ
チ
ャ
市
販
品
- 10 0 10 20 30 40 50 60 70 80
0分 5分後 10分後
新田 L * 新田 a* 新田 b* 市販品 L * 市販品 a* 市販品 b*
Table10 ゴボウの一般成分組成,ポリフェノール含量およびDPPHラジカル消去活性
品種 水分 たんぱく質 脂質 炭水化物 灰分 ポリフェノール含量(mg%) DPPHラジカル消去活性
新 田 88.1 1.0 0.12 10.4 0.39 289* 1.3**
市販品 82.0 0.8 0.18 16.1 0.97 442 2.1
*ク ロ ロ ゲ ン 酸 相 当 量 ,**ト ロ ロ ッ ク ス 換 算 量 (mg/ g) 硬 さ
0 1 2 3 4 5 6
-3 -2 -1 0 1 2 3
軟 らかい ← → 硬い
(人 )
えぐいも 日 田 1号
食 味
0 1 2 3 4 5 6 7 8
- 3 - 2 - 1 0 1 2 3
まずい ← → おいしい
(人)
えぐいも
Fig11 キンピラゴボウの官能検査
Fig12 新田ゴボウ
3. 5チョロギ
チョロギは,一般成分分析の結果,とくに目立って多 い成分はなかった.洗浄による褐変が著しかったが,没 食子酸相当量で 112mg%であり,ポリフェノール含量は ゴボウよりは低かったが,野菜,果実の平均的な含量で ある50mg/100gよりは多く含まれていた(Table11) .
Table 11 チョロギの一般成分分析とポリフェノール含量
Fig.13チョロギ
- 0.5 - 0.3 - 0.1 0.1 0.3 0.5 0.7
色 外
観
歯
ご
た
え
香
り
味
評
点
3. 6 久住タカナ
久住タカナの一般成分組成をTable 12 に示した。一 般 の タ カ ナ に 比 べ て た ん ぱ く 質 含 量 が 高 く 、 炭 水 化 物 がやや低い値を示した。
カ ラ シ ナ 類 に 特 徴 的 な 辛 み 成 分 で あ る 辛 子 油 の 含 量 の 測 定 を 行 っ た と こ ろ , ア リ ル 辛 子 油 が 久 住 タ カ ナ の 葉 部 に 14.4mg%, 茎 部 に 8.02%含 ま れ て お り , 葉 部 が
茎の約1.7倍の含量であるこ とが明らかになった(Table13) .
Table 12 久住タカナの一般成分組成
Table 13 久住タカナのアリル芥子油含量
これは,三池タカナで 10mg %,野沢菜で 2mg%とい う報告があり,アリル辛子油の含量としてはカラシナ類 の中ではやや多い品種であると考えられた.また,今回 アリル辛子油以外の辛子油成分は確認できなかった.
4.
まとめ
1)みとり豆は煮豆に加工した場合,みとり豆がかなり 濃い色調であり,煮くずれが少なく,食味香りともに濃 厚で品質が優れていた.赤飯にした場合には,食味,食 感ともみとり豆がアズキに比べ評価が高かった.餡に加 工した場合は,外観でみとり豆がアズキより評価が高か ったが,食味,食感ではアズキの評価が高かった. 2)日田1号の生イモの色調は白く鮮やかで,ボイル後 の色調は,エグイモは紫色が強くなりくすんだ色になっ たのに対し,日田1号は鮮やかさはなくなるものの白味 が強い色調であった.官能検査の結果は,日田1号はエ グイモに比べ外観が良く,やや硬いものの粘りが強く, 食味も優れていた.
3)ヒョウタンカボチャは,特徴的な形状であり,皮が
水分 % たんぱく質 % 脂質 % 炭水化物 % 灰分 %
久住タカナ 92.4 2.4 0.3 3.7 1.1
タカナ* 92.7 1.8 0.2 4.2 0.9
*五訂食品成分表
葉部 茎部
薄く調理しやすい利点があったが,色調では赤みが薄く 食感は粘質で食味試験では煮付け,スープともに評価が 低かった.
4)新田ゴボウは,市販品と比較してポリフェノール含 量,DPPH ラジカル消去活性が低かった.しかし,アク が少なく食味がよいと考えられた.
5)チョロギは,ポリフェノール含量が112mg%含まれ ていた.また,久住タカナは,特徴的な辛み成分である アリル辛子油が葉部に多く含まれていることが明らかに なった.
参考文献
1) 食総研報(Rept. Natl. Food. Res. Inst)No.45,33~41
(1984)